近年は市民ランナーも増え、マラソンやトライアスロンに挑戦する人は珍しくありません。
 
エネルギーを貯蔵するための食事法「カーボローディング」も広く知られるようになりました。


 
レース前に炭水化物をたくさん摂取して、走るための「燃料」を溜める食事ですね。
 
しかしトレイルランの第一人者、鏑木毅氏は「カーボローディングは全くしない」そうです。
 
これはどういうことなのでしょうか?

体脂肪を使えるようになるトレーニング法 何を食べる?

鏑木氏が参加するのは100マイル(約160km)もの山道を駆け抜ける過酷なレースであり、莫大なエネルギーを必要とします。
 
にもかかわらず「カーボローディングはしない」のは無謀にも聞こえますが?
 
結論からいうと、鏑木氏は摂取した炭水化物ではなく体脂肪をエネルギーとして走れる体質なのです。訓練によっては、こうした体質に変わることも可能です。
 
雑誌「Number Do」Early Summer 太らない生活2013(Amazon)に、この件についての記事がありました。
 
一部抜粋して以下に紹介します。
(太字は管理人によるものです)
 
鏑木氏の解説です。

僕のやっている100マイルレースは、20時間以上も体を動かし続けるので、体脂肪の使い方が鍵になる。体脂肪を燃やしやすい体にすることをつねに意識してます。
 
エネルギー源には大きく分けて糖エネルギーと体脂肪の2つがあります。
 
口にした炭水化物から生みだされる糖エネルギーは、短時間で大きなパワーを生みだすけど、すぐに枯渇してしまう。
 
それにくらべて体脂肪は、ほとんど無尽蔵と言ってもいいくらいに体に蓄えられています。
 
(中略)これは一般の人にはあまり勧められないんだけど、僕たちプロは体脂肪が燃えやすい体を作りあげるために、わざと朝食を控えたり、食事で糖質を抜いて練習することもあります。
 
朝から晩まで山の中を走って、途中で空腹を満たすのはコンビニで買う豆腐や納豆。その場で箸をもらって、駐車場の片隅で食べたりして(笑)。
 

こうしたトレーニングを続けていくと、体脂肪を極限まで使う体質に変わっていきます。




「体脂肪をエネルギーにすれば延々走れる」=カーボローディングは不要

鏑木さんは皮下脂肪までも消費できる体質になっています。

ずっと走っていると体表面の体脂肪さえも使いこんできているのがわかって、皮膚の肉をつまもうとしてもパツンパツンになってつまめない。
 
腕や足の表面にも気持ち悪いくらいに血管が浮き出て、見た目にもわかるんです。
 
普通だったら1時間もすると「もう走りたくない」ってなるんだけど、体脂肪をエネルギーとして使えるようになると最大心拍の7割ほどのペースで延々と走れる。
 

すでに体内に莫大なエネルギー源があるのですから、食事で補う必要はありません。

だからレース前にカーボローディングなんてまったくしません。あれは体内に糖エネルギーをため込むのですが、せいぜい2000から2500キロカロリー。
 
2、3時間を超える運動だとすぐに消費してしまって意味がない。
 
脂肪1kgは1万キロカロリーなので、どんなに体脂肪率の低い人でも100マイルを走り切るのに何の問題もないわけです。
 
そもそも人間には長時間に渡って動き続ける能力が備わっていて、「BORN TO RUN 走るために生まれた(Amazon サンプルを読む・Kindle版あり)」という本にも書かれてますが、昔はそうした能力のおかげで瞬発力ではかなわない獲物を仕留めることができた。
 
何時間も追い続けて、獲物が疲れたところを武器で仕留めるという、本来持っている持久力を目覚めさせることができれば、20時間以上走り続けることだってフツーの感覚でできちゃうんです。
 

(以上の記事はNumber Do Early Summer 太らない生活2013(Amazon) 22~23ページを参考にしました)
 
この記事を参考にすれば「2~3時間以内の運動であればカーボローディングでも対応可能」と言えるわけですが、それを超える競技であれば体脂肪を使う必要がありそうです。
 
鏑木氏のように、100マイルのトレイルランレースに参加する人は少数だとしても、トライアスロンなどで(超)長時間使えるエネルギーを必要とする人は珍しくなくなりました。
 
そんな人は、鏑木氏のトレーニング法を参考にして体脂肪を使える体質への変化を目指してはいかがでしょうか。