雑誌「剣道時代」の連載「対談 小林英雄の「卒爾ながら・・・」に、横浜市立潮田中学校剣道部の大塚陽介監督のインタビュー記事がありました。
一部を抜粋して紹介します。
潮田中は2015年の全国中学校剣道大会で優勝を果たしています。小林氏の問いに、大塚監督が部運営の秘訣などを語られています。
このコンテンツは雑誌剣道時代 2015年 01月号(Amazon)96~101ページを参考にしています。(以下敬称略)
大会前であっても「いつも通り」を心がける
小林 本番に向けての調整法はいろいろとあると思うのですが、今回はどのようなことを心がけましたか。
大塚 教員になって今年で11年目なのですが、さまざまなことに取り組んできました。例えば大会の2日前に完全休養してリラックスさせたり、気分転換に映画につれていったりもしましたが、どれもなかなかうまくいきませんでした。
そこで全国大会に出場した4年前からは合言葉を「いつも通り」にしました。県外の練習試合でも、大会本番でも「いつも通り」を心がけ、「全国大会だからこれをする」「県外遠征だからあれをする」ということはやめました。
小林 それが一番いいみたいですね。
大塚 意識すると硬くなってしまうのですね。当然、全国大会ですから緊張しますが、その緊張を助長させてしまっていたようです。
小林 まだ中学生ですからね。普段通りに取り組むほうがよい結果が出るのかもしれないですね。普段通りに試合をさせることで、なにかを掴み取っていくこともありますね。
大塚 精神面は不安定な部分がありますので、なるべく試合で自信をつけさせるようにしています。
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やる気を引き出す秘訣と練習試合は一日50試合!
潮田中の稽古の特徴のひとつは、練習試合を重視している点ではないでしょうか。量、質ともにかなり高レベルにあるようです。
小林 潮田中の場合、全員が剣道をやりたくて入ってきていると思うのですが、やる気を引き出す秘訣とかはありますか。
大塚 選手争いが相当厳しいので、それがひとつのやる気の原動力になっていると思います。うちの場合、平日が稽古、週末は練習試合というスタイルですが、練習試合ではただ勝てばいいのではなく、現在、課題としていることができているのか否かを見るようにしています。
小林 自分の課題、やるべきことは何かをわかっているということですね。
大塚 そうです。それができている選手は上にいくことができますし、できていない選手は残念ですが、降格です。
例えば遠間から面を打つという課題を持っている選手は、打たれるリスクも高くなります。ですから、打たれることに対して咎めることはありませんが、怖くて勝負をしなくなったときは厳しく指導するようにしています。
小林 練習試合はどのくらい行っていますか。
大塚 潮田中が主催している練習試合は1日50試合です。朝7時から夕方6時まで50人と試合をさせます。試合時間は2分30秒、三本勝負ではなく、無制限で有効打突を競い合います。
小林 たいへんですね。
大塚 1日の練習試合で課題ができていない選手はAチームからBチームに降格することもありますし、ときにはCチームになることもあります。もちろん降格しても這い上がってくる選手もいます。
小林 審判はどうされるのですか。
大塚 2人制で、対戦校の生徒から一人ずつ生徒を出します。体育館に10試合場くらい作るのですが、一斉にブザーを鳴らし、その合図で試合を区切ります。時間効率を考え、大将戦が終わったときには、次のチームの先鋒戦が始まるようにしています。朝7時から夕方6時まで2分半のブザーをずっと鳴らし続けています。
小林 土曜日、日曜日と連続で練習試合を行うこともありますか。
大塚 あります。そうなると100試合になりますね。
小林 試合数が半端ではないですね。
大塚 試合でしか経験できないポイントがあるので、その経験をなるべく多く積ませたいと考えています。内部で試合練習をしても、どうしても身内同士ですから、緊張感が違います。