高齢者の筋トレというと「活動量を増やす」「寝たきりを防ぐ」といった利点が強調されます。
これらに加えて、筋トレは認知症の改善にも効果的なのだそうです。
このコンテンツでは、筋トレが認知症にもたらす効果についてまとめます。
(このコンテンツは雑誌週刊新潮 2015年3/12号(Amazon)47ページを参考にしています)
筋トレで脳と感覚神経を繋げる→認知症を改善する
「認知症を発症すると疲れ知らずになる」のはご存知でしょうか?
現役ボディビルダーで、デイケアインストラクターの本山輝幸氏によると、軽度認知障害(MCI)を発症している人は、筋肉から脳に信号を送る「感覚神経」が鈍っているそうです。
これは、筋肉の疲労が脳に届かず、疲れを感じにくいことを意味します。
認知症を発症して徘徊癖のある高齢者が、驚くほどの遠距離を歩いて移動するのもこのためです。
同じ理由で、高齢になって体力自慢をする人ほど、MCIを発症している可能性が疑われます。
MCIになったら、脳と筋肉の感覚神経を繋げる作業をする必要があるわけです。
本山氏によると、そのためには負荷を強めにした筋トレが効果的であり、本山氏は認知症改善を目的に「本山式トレーニング」を開発しました。
本山式で鍛える筋肉とトレーニング例 認知症改善率は100%!
脳に伝わる刺激は筋肉の太さに比例するので、本山式トレーニングでは、
太股前面の大腿四頭筋 太股裏側の大腿二頭筋 太股内側の内転筋 お尻の大臀筋
といった、大きく太い筋肉を優先的に鍛えます。
トレーニングの例を紹介します。
2 片脚を伸ばしたままゆっくり前方で上げ下げする(5回ずつ両脚行う)
3 同じく脚を伸ばしたまま後方へ上げ下げする(5回ずつ両脚行う)テーブルなどに手をついてもOK
トレーニングの王道、スクワットもあります。
2 お尻に集中しながら、腰をゆっくりと10cmほど下に落として、上げる これを20回繰り返す
先述したように、これらのトレーニングで筋肉を使ってもMCI発症者は疲れをあまり感じません。
しかし、継続していくと徐々に痛みや疲労を覚えるようになってきます。
これまでに本山氏は、自身の教室で数百人のMCI発症者に本山式トレーニングを施しており、改善しなかった人は皆無なのだそうです。
筋トレによる筋肉刺激は脳細胞を活性化させる
アルツハイマー型認知症は、アミロイドベータが脳細胞を殺すことで発症しますが、MCIの段階ではまだ生きている脳細胞は多数存在します。
トレーニングによる筋肉の刺激はその細胞を活性化し、死んでしまった脳細胞の代わりの活動を促します。
また、神経細胞が多く集まる脳幹網様体も刺激されることで、脳全体の覚醒効果も期待できます。
MCIを発症していても、脳の運動野から各筋肉に信号を送って動かす「運動神経」は健在なので本山式トレーニングは可能です。
高齢者の筋肉トレーニングは、認知症改善以外にも、体力向上や転倒防止、腰痛・ひざ痛予防など様々なメリットがあります。
ある程度の年齢に達したら、本山式トレーニングを参考に筋トレを行うのは極めて有意義と言えるでしょう。