東芝ブレイブルーパスの知念雄選手は、やや異色の経歴を持っています。
 
身長183cm、体重125kgと、恵まれた体格を持つとはいえ、ラグビーを始めてわずか2年で日本代表入りを果たしているのです。
 
以下にその経緯をまとめます。

(このコンテンツは雑誌週刊現代 2017年5/20号(Amazon)140~141ページを参考に作成しました)

ハンマー投げ選手として実績を残す

2012年の秋までは、陸上ハンマー投げのトップ選手でした。
 
お父さんの信勝さんはかつて円盤投げの一流選手であり、地元那覇西高校の教諭を務めています。
 
同校に入学した知念選手は「父親とは24時間、365日一緒」にいて、投擲の技術を磨いたのです。
 
そして3年生でインターハイと団体を制覇し、順天堂大学に入学します。
 
大学では1年生、4年生とハンマー投げでインカレ優勝を果たし、順当にいけば実業団で競技を続けるか、教員を目指すつもりでした。
 
しかし大学4年で陸上競技の大会を全て終え、「ケガの心配をしなくてもよくなった」頃、ラグビー部から助っ人を頼まれます。
 

ひょんなことからラグビーへ

4部の試合で、場所は千葉工業大学グラウンド。
 
未経験者なので、プロップはスクラムが危険なためロックのポジションにつきました。
 
ラグビー部員からの指示はひとつだけ。
 
「ボールを持ったら、まっすぐいって下さい」
 
知念選手はまっすぐ行きましたが、「思いっきしノックオン」してしまいます。
 
それでも初戦でラグビーの楽しさのとりこになり、「本当に楽しかったです。正直、4部には、こんな大きな人間はいないので、どんどん前へ出られて」
 
陸上指導者となるべく大学院へ進みましたが、ラグビーの面白さにもどんどんはまっていきました。周囲も知念選手を「順天堂に未完の怪物あり」と注目するようになっていきます。
 

 
そして東芝の練習生を経て、知念選手は2015年にブレイブルーパスに正式に入部します。
 
猛特訓が伝統の東芝で、朝7時からの朝練習、全体トレーニング後の個人鍛錬を怠らず、力をつけています。
 
デビュー戦は同年の12月、ホンダヒート戦でした。2017年4月の韓国戦では、体重や腕力に頼る相手のスクラムを「8人でまとまる」スキルで押し返し、80対10で快勝しています。
 
ラグビー選手としての”進展”があまりにも早いようですが、本人は「ラグビーを始めるとき、2019年のワールドカップ出場を意識していました」

陸上とラグビー どちらかを選ぶなら?

「陸上競技とラグビーのどちらを始めようかと迷っている子供がいたら、どちらを勧めますか?」との問いには
 
「あー。ラグビーですかね」
 

 
その理由とラグビーの魅力を説明するなら
 
「いくら強く当たっても反則にならないんだよ。それに15人で規律を守る一体感がある」
 
なのだそうです。