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ここまで”スイング型”の有効性を紹介してきました。

それでは、従来の”腿上げ型”は全く意味がないのでしょうか?
 

 
また子供がスイング型で走れば速くなるのでしょうか。

子供は筋肉が未発達 距離によって理想の走り方も違う

小学生くらいの子供が、この”ルイス型”で走れば、徒競走で一位を取れるような気もしますが、実際はどうなのでしょうか。
 
阿江教授の解説です。

小学生は股関節周りの筋肉が未発達なので、ルイス走法はできません。事実、足の遅い子ほど腿が下がっています。
 
なので、”腿上げ”は必ずしも間違いではないのです。
 
もっとも、腿を上げれば速くなるというわけではないのも確かですが。
 
それに、運動会の徒競走は50mとか短い距離を走りますよね。その場合は、ピストン系の走法の方が速く走れるのです。
 
イチロー選手のベースランニングを見ると、膝が伸びきっていますが、それはそれで理にかなっているのです。いま話題のオコエ(瑠偉)選手も然り。
 
ただ、彼らが100メートルを走ったら速いかというとそれはそうとも限らない。10~50メートル程度のダッシュと、100メートル走とは、理想の走法が全く異なるのです。
 

 
つまるところ、人間の自然な走り方というのは、ルイス走法だと思います。足が速い日本の子供たちの多くも、ルイスと同じような走り方だったのかもしれないのです。
 
でも、かつての日本の指導者は、より速く走らせようとそれを矯正してしまっていた。
 
アメリカの指導者は大雑把というか、速ければそのままにしておくんですね。日本も、もともと速い子はほったらかしにしておけばいいのです。

こうした事実が周知されていけば、日本人でもスプリンターの裾野が広がっていくのではないでしょうか。




現在のトップスプリンターのフォームは改善点あり 9秒台は?

最後に阿江教授が、”日本人初の9秒台”実現のため、現在のトップスプリンターの走りを解説されています。

桐生君のフォームを見ると、腿が上がり過ぎていますね。ケンブリッジ君の場合は、膝が伸びきっている。山縣君も、ルイスや伊東君のフォームにはまだなっていません。
 
ただ、逆に言うと、彼らはいずれもまだ伸びしろがある、と言えます。
 
9秒台は、91年世界陸上東京大会のように、条件さえ整えば、いずれ達成されるでしょう。

スプリント競技といえば、以前は日本人選手が活躍する場面はあまり想像できませんでした。
 
しかし今後は「9秒台が出るか?」という注目点があり、さらにその上の記録は?という期待も十分に持てそうです。
 
このコンテンツは週刊新潮 2016年8/4(Amazon)号42~45ページを参考にしました。