平成29(2017)年9月9日の日本学生対校選手権・陸上男子100m決勝で、桐生祥秀選手が9秒98をマークしました。
日本人で初めて10秒の壁を突破した、歴史に残る快挙です。
(このコンテンツは平成29年(2017)9月10日付け東京スポーツ新聞を参考にしています)
高校時代から注目された桐生選手 リオ五輪後は嫌いだった筋トレも
国際陸上競技連盟によると、9秒台を出した126人目のスプリンターとなりました。(追い風参考では、桐生選手は15年に9秒87を出しています)
今回の記録で、1998年に伊東浩司選手が出した10秒00の日本記録を19年ぶりに更新しました。
桐生選手が注目されたのは、京都・洛南高校3年だった2013年に10秒01をマークしてからです。
17歳で「人生が変わった」ほどの注目を浴び、重圧も感じました。洛南高校で指導した柴田博之監督は「きついだろうな、と。桐生が期待を背負ってきた期間は(ほかの選手の)比じゃない」と桐生選手を心配していたそうです。
高校を卒業してからもずっと注目されてきた桐生選手でしたが、リオ五輪では日本勢でただ一人予選落ちし、パワー不足を思い知らされました。
そこでこの弱点を克服すべく、「大嫌いだった」という筋力強化に取り組みます。
東洋大学の土江寛裕コーチを通じて、アテネ五輪ハンマー投げ金メダリストの室伏広治氏に筋力トレーニングの指導を仰ぐのです。
2016年の秋からは週に一度、それまで未経験だったチューブトレーニングなどを1対1で学んでおり、その成果も得ています。
土江コーチも「全身をうまく使えるようになり、軸がブレなくなった」と評価するように、トップスピードが向上して、コンスタントに10秒0台で走れるようになりました。
ちなみに100分の1秒まで表示する現行の電気計時が始まってから、世界で初めて10秒を切ったのは米国のジム・ハインズ選手で、1968年に9秒95をマークしました。
世界記録はジャマイカのウサイン・ボルト選手による9秒58で、アジア記録はナイジェリア出身でカタールのフェミセウン・オグノデ選手が出した9秒91です。
日本陸連が認めた最初の日本記録は、三島弥彦選手が1911年に出した12秒0です。