お笑い芸人・オードリーの春日さん、若林さんがアメリカンフットボールの経験者であることは有名ではないでしょうか。
 
このお二人はアメフトの番組も担当していて、アメフトの楽しさを伝えられています。
 
雑誌「週刊文春」2018年2月8日号の「阿川佐和子のこの人に会いたい」で、阿川さんとオードリーが対談されていました。
 
その中から、アメフトに関する部分を抜粋して紹介します。

(このコンテンツは雑誌「週刊文春」2018年2月8日号(Amazon)122~126ページを参考にしています)

ルールが複雑&厳しい役割分担

阿川 どうして日本ではアメフトが人気スポーツとして根付かないんですかね。
 
若林 単純にルールが難しいってことだと思います。自分で番組をやっていてちょっと難しすぎるなって思いますもん(笑)。
 
春日 しかもルールが毎年のように変わるんですよ。より面白い試合にするように、ボールを蹴る位置をちょっと変えるとか。私もよくわからなくなります(笑)。とくに自分の場合、やっていたポジションが目に入りづらいプレーをするところだったんですね。相手が来るのを押さえるだけとか。すると細かいルールを覚えずともできるところがありまして。
 
中略
 
阿川 とはいえ、まずは基本的なルールをおさらいしていきたいんですけど、どうしてアメフトはあんなに防具をいっぱいつけるんですか?
 
若林 これはほんとに死んじゃうからですね。革のヘルメットの時代もあったんですけど、死人が出る事態になっちゃってアメフトが禁止になったこともあって。
 
阿川 そんなに過激なのか。あと今回ようやく理解したのは選手は22人いて、攻撃のときに11人、守備のときに11人が参加して、完全入れ替え制。それぞれの役割分担が明確に決まっていると。
 
春日 そうですね。僕たちが高校のときには部員が少ないこともあって、攻撃と守備両方やる人もいたんですけど、NFLでは総入れ替えです。
 

 
阿川 しかもこれだけ体張ってるのに一回も僕はボールを持ったことがないって人がいるわけでしょ?フィールドにいるのにボールを持っちゃいけないなんて・・・。
 
春日 持ったら反則なんです。攻撃側でも半分くらいの人は持っちゃいけない。まさに私はそのポジションでした。
 
阿川 寂しくはなかったんですか?
 
春日 まあ面白くはないです(笑)。
 
(中略)
 
阿川 要は春日さんみたいな格闘技系と、若林さんの担当する球技系が混じっているスポーツってこと?
 
春日 まさに競技が違う感じですね。球技をやってるのに僕は球を持ったら反則ですから、球技と呼んで本当にいいのか(笑)。
 
若林 格闘技系のポジションの人は味方のために体を張り続けないといけない。NFLだと、ほんと横綱同士の大一番が毎回五発連続で行われているみたいな状況になるんです。
 
でもチーム内で格差はあって、一番の高給取りは司令塔のクォーターバックなんですね。クォーターバックは、オフシーズンになるとボールを触っちゃいけない人たちの家族を全員ハワイ旅行に連れて行ってもてなしたりする。つまり司令塔からも「お前たち可哀そうだな」って思われてるんです(笑)。
 
阿川 アハハ、同じチームでも身分格差がある。
 
若林 さらに格闘技系ポジションの人って何をしたかが数字にほぼ出ないんです。「こいついいブロックしたな」って誰にもいわれないんですね。
 
阿川 褒められないんだ・・・。かわいちょー。

まるで受験勉強?頭脳も必要!

若林
実はアメフトのオフェンス陣はアスリートでありながら、一流大学を出てることがほとんど。アメフトって計算されつくした動きと作戦があるので、攻撃側はプレーの種類を三百くらい覚えなくちゃいけなくて。
 
阿川 三百も!?ディフェンス側は?
 
春日 高校時代、ディフェンスもやってましたけど基本的にあまり覚えなくていいんです(笑)。相手が来るのを押さえる役割なので、どちらかというとオフェンス主導で守る側にはそれに対応するアドリブ力が必要になる。
 
オフェンスより先にディフェンスが動いてはならないというルールがありますから。逆にオフェンスは動き方が決まっていてそれを覚えなくちゃならない。
 

 
若林 以前はプレーの種類が綴られたバインダーをなくしたらNFLでは罰金だったそうなんです。いまはテクノロジーが進んで、相手のプレーを研究して、ここが弱点だなと思ったら、試合の前日とかにタブレット端末に急遽プレーが送られてくる。だから深夜に大男たちがそれを必死に覚えるっていう(笑)。
 
阿川 試験勉強みたい(笑)。でも、たとえばサッカーや野球だと監督が作戦を決めるじゃないですか。アメフトの場合は?
 
若林 ヘッドコーチがいます。さらにスタジアムの上からプレーを見るコーチがいて、ヘッドコーチと連絡を取り合う。そのヘッドコーチが、クォーターバックに作戦を伝えるんです。クォーターバックだけはヘルメットの中にイヤホンを入れていいので。
 
阿川 あ、プレー中に作戦を耳にささやかれるんですか!?
 
若林 プレー中もそうですし、ディフエンス時はメンバーが入れ替わるので、そのときにタブレット端末を見ながら、ここが穴だな、とか相談する。だからハーフタイム後に勢いがガッと変わることもあるんですよ。
 
阿川 攻撃側は相当に頭を使わなきゃいけないんですね・・・。
 

 
春日 ディフェンス側にも向こうの陣形を読む要素はあるんです。ディフェンスにもコーチがいて、相手のパターンを分析し、ブロックサインを毎回出す。ディフェンスのリーダーがそれを見てチームメイトに伝えます。
 
阿川 じゃ、ディフェンスも頭使ってるじゃないの!
 
春日 使わなくはないですが、それ以上に、向こうの動きに対応する野性の感覚が重要ですね。
 
阿川 なるほど~。こうやって直接お二人からお聞きしてると、アメフトって見どころ満載のスポーツだとわかりましたけど、まったくの素人に「なんか面白そう」って感じさせるには最初にどう説明をすればいいんですかね。
 
若林 あえて乱暴なたとえ方をするなら、陣地の取り合いだと考えたらいいんじゃないですかね。ランが戦車、パスがミサイル、キャッチできたら領土になるわけですよ。それをディフェンス側がPAC3で迎撃するというような(笑)。
 
阿川 アハハ、アメリカ人らしい開拓精神に満ちたスポーツだと(笑)。

「絶対負ける」相手に卑怯な(?)プレーで勝利!

若林 アメフトって体格や技術で負けていても、作戦次第、もっというと卑怯なプレーで勝つことができるんですね。
 
春日 僕らは日大二高という高校でアメフト部だったんですが、あるとき駒場学園という名門校と対戦したことがあるんです。絶対に我々は負けるだろうという下馬評だったんですけど。
 
若林 試合前に、先輩たちが必死に卑怯なプレーを考えたんですよ。アメフトではワンプレーごとにハドルと言って、クォーターバックの周りに選手が集まって作戦会議をするのが普通なんですね。
 
阿川 あ、ひとつのプレーが終わるたびにちょっとブレイがあると。
 
春日 そう。プレー、作戦会議、プレーの繰り返しなんですよ。
 
若林でも僕らはその試合では8プレー先くらいまで決めて、それを書いたメモをリストバンドの内側に仕込んで試合に臨んだんです。
 

 
阿川 え!? じゃ、いちいち作戦会議しないまま・・・?
 
若林 ええ(笑)。作戦会議をしなくてもルール上はOKなんです。作戦会議するぞって向こうは思ってるのに、こっちはどんどんプレーを進めるから、駒場学園側はパニックを起こしちゃって、結局勝っちゃったんですよ。
 
阿川 スゲェ!マンガみたい・・・。
 
↑抜粋ここまで
いかがだったでしょうか?
 
オードリーのお二人が話をすると、どうしても面白い感じになってしまいますが、アメフトの一側面を知ることはできたのではないでしょうか。
 
米国民をあれだけ熱狂させているアメフトが、今後は日本での認知度がもっと上がるかもしれません。