抜群の加速力を活かして相手を一瞬で振り切るストライカー、浅野拓磨選手。
 
小学生時代に所属したペルナサッカークラブは、浅野選手にサッカーの楽しさを教えてくれたそうです。

このコンテンツでは、「サッカースターになる!」70~71ページを参考に、浅野選手が所属したペルナサッカークラブでの練習についてまとめています。
 
それはかなり独特の内容だったようです。


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「クリアはNG」「キック力は必要ない」

ペルナサッカークラブ独自の練習方針は選手のチャレンジ精神を養っていました。

サッカーって楽しいなってずっと思っていましたね。コーチがサッカーの楽しさを教えてくれました。小さいころにサッカーは楽しいものだと植えつけてもらわないと、中学校、高校に行っても「楽しい」っていう気持ちはなかなかできないのかなと思います。
 
チームの方針でもあったのですが、僕たちのチームは、ボールを大きく蹴り出すクリアをしませんでした。「クリアするくらいなら、ボールを取られて入れられろ!」っていうコーチだったんですよ。
 
自分たちのゴール前でもドリブルやパスで前に行こうというサッカーだったので、チャレンジ精神が自然と植え付けられました。
 
そういうチャレンジする気持ちはチームのみんなが持っていましたね。
 

勝敗だけを考えたら、クリアするほうが有利な場面は多いはずです。
 
しかしペルナサッカークラブの指導は「小学生時代にやるべきこと」を優先する方針を徹底していました。
 
そのため一見すると「サッカー選手に必要な能力」の養成も後回しにされました。
 
浅野選手の回想です。

普段の練習だけだと、キック力が全然つかない。僕らは県トレセン(選抜チームでの活動)とか、東海トレセンとかに選ばれていたんですが、そこはキックの練習があるんです。そのとき、周りの人と比べたらボールが遠くに飛ばなくて。
 
それでコーチに「なんで蹴る練習をしないんですか」って聞いたんですけど、コーチは「それは中学生や高校生になってからできる。でも技術を磨くのは中学生、高校生になってからでは難しい」と言っていて、そうなんだと思った記憶があります。
 
そうしたら本当に大きくなったときに自然とキック力はついてきました。周りをよく見てみると、技術は小さいころにやった人のほうが、できている印象でした。

そして浅野選手が小学生の時に学んだのは、サッカーの楽しさやテクニックだけではありません。
 
それはこのようなアドバイスとして、プロを目指すサッカー少年に送られています。
 

小学生のときのコーチが僕たちにアドバイスしてくれたことがあるんです。そのひとつが、「来たときよりもきれいにして帰ろう」という言葉です。それを僕は今でも守っているんですよ。
 
遠征に行ってホテルの部屋を出るときには、布団をきれいにして、ゴミを集めるとか、お風呂に入った後には、周りについた泡を洗い流すとか、誰かが出したままにしたイスを戻しておくとか、本当に小さなことなんですが、気をつけています。
 
正直いって、それをやってもやらなくても、誰にもわかりませんし、得するのか損するのかもわかりません。
 
ただそんな積み重ねが、自分に返ってくるというか、いいプレーにつながっていくような気がするんです。そう思えたのも、小学生のときに純粋な気持ちでコーチの話を聞くことができたからだと思います。
 
コーチや両親はすごく大切な言葉をかけてくれます。それを素直な気持ちで聞ける選手であってほしいと思っています。

サッカーに限らず「日本代表チームが使ったロッカーは信じられないほどキレイに掃除されている」とは、世界大会やオリンピックなどでも知られるようになりました。
 
日本チームが大きな大会で一定の成績を残せているのも、こうした心がけが貢献しているのかもしれません。