前ページ「投手の下半身の強さや股関節の柔軟性 理想的な登板間隔 金田・桑田氏対談」まで、球数制限の是非などについて、「週刊ポスト」の特集を紹介してきました。

このページでは、同じ記事から、ヘッドスライディングに関して福本豊氏と亀山つとむ氏の主張を紹介します。(以下敬称略)

福本豊さん「走り抜けたほうが速い」

福本 1塁は走り抜けたほうが速いに決まっとるでしょうが。100メートル走で、ウサイン・ボルトがヘッドスライディングでゴールするか?走り抜けとるがな。仮にヘッスラのほうが速ければ、1人ぐらいゴールで頭から突っ込んでもおかしくない。

ランナー

タッチが不要で、ランナーも走り抜けられる一塁では、トップスピードの状態で走り抜けた方が速い。なんでわざわざグラウンドと摩擦を生む必要があるのか。スライディングというのは二塁や三塁、ホームベースでの守備側のタッチをかいくぐる時にするもの。
 
もちろんその時も頭から行ったらアカンよ。手をスパイクで踏まれたり、頸椎を痛めたり、ケガをする危険がある。これが一番怖いんです。
 
1回のケガで選手生命が終わることもある。それにプロのブレーは子供たちも見ており、影響力がある。少年野球の指導者には「アウト1回、ケガ一生」と教えとるが、監督がケガをした子供たちの面倒を一生見られるわけない。だからプロが率先して、危険なプレーをしたらアカン。
 
牽制での帰塁でも、左右の重心を均等にしてリードしておれば、足から余裕で戻れるはず。今の選手は仲良し野球をやっているけど、オレたちの時代は頭から帰塁すればグラブでパチーンと顔面にタッチされたもんや。痛い目に遭わんとわからんかもしれんが、大ケガするリスクと釣り合うようなプレーでないことは断言できるね。

亀山つとむさん ヘッドスライディングにはアピールの意味も

亀山 実は僕も現役中、福本豊さんには「ヘッスラはケガするからアカン」、「走り抜けた方が速い」と言われ続けていました(笑い)。
 
危険が伴うのは事実です。僕もリトルリーグの監督をした時は、危ないので子供たちには教えていません。速さの面でも、万人がうまくできるわけじゃないので、一般には走り抜けた方が速いとは思います。
 
ただ僕はもちろん「自分は飛び込んだ方が速い」と信じていたからやっていました。それにヘッスラには、プロで生き抜く上で重要な駆け引きがあったのです。

ヘッドスライディング

1つは審判へのアピール。プロの審判はプレーの流れでの判定が多く、守備がベースに触れていなくても、タイミングでアウトとすることがありました。でも頭から突っ込むと判定の時に悩むんです。
 
だから僕は、絶対にセーフにしなければならない場面でしかやらなかった。乱発しなかった分、「亀山が飛び込んだのだから」と、その後のヘッスラがセーフになる。すると、ランナーとして残らないとゲームセットになるといった、ここ一番で生きてくる。だからヘッスラはいつも試合の終盤でした。
 
もう1つはベンチへのアピール。僕が最初に一軍でヘッスラをしたのは入団5年目。生き残りをかけて臨んだ巨人戦でした。それがきっかけでレギュラーの座を掴んだ。その後は「ヘッスラの亀ちゃん」として定着、満員の甲子園のファンに背中を押されて、ヘッスラしていましたね。
 
プロで生き残るために危険を承知でやらないといけないプレーもある。それがヘッスラなんです。

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