恩田浩司教士八段が打突の際に心かげているのは、
相手にとって何が来るのかわからない状態を作る
ことです。
このコンテンツでは恩田八段が仕掛け技、出ばな技の際に意識していることをまとめています。
(「剣道時代」2015年1月号(Amazon)106~111ページを参考にしています)
腰始動で入り間合いを詰める 打ち気が強くなるのはNG
「相手がわからない」状態を実現するため、間合いを詰める時は腰始動で入り、身体ごと迫っていくイメージを持っています。
これにより相手は「面、小手、突き」のいずれが来るのか判断が難しくなります。疑心暗鬼になり、心の隙が生まれやすくなるのです。
その隙に乗じてさらに攻めを入れ、相手を崩せれば理想的ですが、それは相手も考えています。
実戦でそうそう思うようにはいきませんが、可能な限りそうした状態に持ち込むよう心がけましょう。
技を出すときは相手の打突部位まで最短距離で竹刀を操作します。
この時、打ち気が強すぎると右半身に力が入り、右に一度開いてから打つなど、軌道が大きくなってしまいます。
間合いが詰まった時ほど打ち気を抑え、まっすぐに技を出せるように日頃から稽古を積んでおきましょう。
仕掛け技 圧力をかけて構えの崩れを捉える
仕掛け技は、文字どおりこちらから仕掛けることで、相手の剣に「下がる」「上がる」「開く」「手元が浮く」といった変化をもたらし、それを捉えて打つ技です。
単に先に技を出すのではなく、こちらの攻めによって相手の構えを崩し、その崩れに応じて技を選択していくのが大切です。
恩田八段の場合、構えた状態をなるべく崩さずに間合いを詰め、相手に圧力をかけます。
身体ごと迫るような状態を作れば、相手に「四病(四戒)」を感じさせることができると考えています。
打ち気はなるべく見せず、リラックスした状態を作ります。
ここで相手が小手を警戒して手元を下げれば、そのまま面と突きの機会が生まれ、面を警戒して手元を上げれば小手を打つ機会が生まれます。
こうした機会を逃がさないためには、いつでも打てる状態でなければいけません。絶好の機会が生まれても、こちらが不十分では打突部位を捉えられません。
たとえ防がれたとしても、相手が防御で手一杯になるような打ち切った一本を出すのが重要です。
出ばな技 相手に「いける」と錯覚させて引き出す
出ばな技は、文字どおり相手の出鼻を打つ技ですが、こちらがただ待っているだけではいつまでも打てません。
しっかり圧力をかけ、打たざるを得ない状況、もしくは相手に「いける」と錯覚させて相手の技を引き出すことが大切です。
技としては後から打つ形になりますが、先を懸ける気持ちで相手を攻め、相手の動揺を誘うようにします。
出ばなに面を打つ時、必要以上に腕を上げるのは良くありません。打突の力が上に逃げてしまうからてす。
恩田八段は相手の顎を貫くつもりで前に出ます。こうすることで軌道が最短距離になり、相手より速く面を捉えやすくなるのです。相手も出てくるので、出てきた距離に応じて打ち方を調整します。
出ばな小手では、相手の手元が上がる瞬間を捉えるよう心がけます。面に跳び込んできた瞬間を捉えても、相手の勢いに負けてしまうからです。
相手に圧力をかけながら間合いを詰め、手元の上がりを瞬時に捉えるのです。とはいえ攻めすぎると相手は防御にまわってしまうので、必要以上に攻めすぎないのが大切です。
打突は、手の内の作用と強度と冴え、足の踏み込みの強さで一本にするような気持ちで行います。