前ページ・福本豊さんのスタート研究 投手のクセを見つけるきっかけの続きです。
 
このシリーズは、今回が最後です。
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今回は、実際のプレーにおける福本さんの考えを紹介します。
 
現役でプレーしている選手に最も気になる点ではないでしょうか。
 
(このコンテンツは雑誌「週刊文春」2016年6月23日号64~67ページを参考にしています)

体の向きやスライディング やるべきではないプレー

福本さんは塁上でこうしたことを意識していました。

走り方は忍者のように。
 
スタートの二、三歩は投手の方を向いたまま足だけ二塁に動かせば自然に体も向く、ベースは左足で踏む、塁は小さく回る。
 
スライディングも尻や背から行くとブレーキがかかり過ぎるから、体の側面で。

ランナー

負傷するリスクを考えて、やるべきではないと考えているプレーもあります。

僕は牽制でも盗塁でもヘッドスライディングはやりませんでした。あれは危ない。
 
野手はグラブで派手にバーンと叩きよる。そうせんとアウトに見えないんです。昔は今よりひどくて、「ごめんごめん」なんて言うけど、容赦なかった。
 
だからヘルメットかぶって、必ず足からスライディングしました。「アウト一回、怪我一生」って僕、たまに放送で言うんですけど。
 
(中略)
 
それと、外野守備でもダイビング・キャッチは危ない。
 
でもヒット性の当たりを凡打にすることは何より気持ちいい。僕はいかにボールより早く落下点に走るかをやりました。そして取ったらすぐに投げ返す癖をつける。
 
勝ち負けに関係なくてもそうする。そういう当たり前のことをやるのが一番難しいんです。

ヘッドスライディングについては、関連記事もあるのでご覧ください。

「今の選手はもっとスタートを」”オイアクマ”とは?

盗塁王・福本さんからすると、現在のプロ野球の盗塁記録に関しては少し不満があるようです。
 
それは技術的というより、メンタル面での不満です。

今は勇気を持ってトライするいう気構えが足りんと思いますよ。
 
セもパも昨シーズンの盗塁王は34個でしょう。30台じゃキングとは言えない、「該当者なし」ですわ。
 
われわれの頃より試合数が増えて143試合ある。一試合一回出塁して、143回盗塁を試みれば、半分成功したら70盗塁ですよ。50は軽いでしょう。そうすれば給料もドンと上がりますよ。
 
70以上盗塁したのは昭和60年の高橋慶彦以来、いない。
 
いまの選手は塁に出ても、失敗を恐れてガチガチになっとる。勇気を持ってスタートせえ、と言いたいですね。

ランナー

最後に、福本さんが現役時代にコーチから教わった言葉を紹介します。

バッティングコーチの中田昌宏さんが、「こんな言葉知っとるか」と教えてくれた、「オ・イ・ア・ク・マ」というのがあるんです。
 
「怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、迷うな」
 
人の心には一つくらいは悪魔がいる。これからいろんなことがあったとき、呟いて冷静になったらいい、とマッチ箱の裏に書いてくれたんです。

週刊文春の記事は以上です。

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