2016年のラグビーワールドカップで、日本代表チームは南アフリカを破り、世界中を熱狂させました。
この”ワールドカップ史上最大の番狂わせ”を実現させたのは、エディ・ジョーンズヘッドコーチの指導手腕であることに疑問を持つ人はいないでしょう。
エディコーチとはどのような人だったのでしょうか?その人となり、指導法について、雑誌「週刊現代」に記事がありました。
記事は野中敬義氏、佐藤秀典氏(ラグビー日本代表通訳)、荒木香織氏(ラグビー日本代表メンタルコーチ)の鼎談形式でエディコーチについて語られています。
一部を抜粋して紹介します。
佐藤 あのエディさんについていって結果を残した選手たちは、改めてすごいなと思います。
野中 練習はとてもハードですし、接し方も厳しくて、ギリギリのところまで追いつめられていましたね。歴代の日本代表で最多の96試合に出ている大野(均)選手でさえ「(合宿に向かう)飛行機に乗る前から胃が痛くなる」とこぼしていました。
佐藤 エディさんの持論は「人は切羽詰まったときにこそ本領を発揮できる」。早朝6時スタートで多い時は1日4回練習する過酷な合宿で、選手は心身ともに追い込まれる。そこで周囲と衝突したり、どうにかしないといけないと危機感を覚えることで、新たなアイデアが浮かんでくる、という考えを持っています。
それに、エディさんは焦ったり、パニックになることを嫌うので、あえて選手を追い込み、その中での対応力もつけさせていました。
荒木 それくらいじゃないと、南アフリカには勝利できない。選手もその厳しさが必要なのはわかっていたから、「やっていられない」と投げ出す選手はいなかった。
佐藤 でも私はそうなりかけましたけど(笑)。チームに合流してすぐにスタッフの方から「おまえもジャパン病にそのうちかかるよ」と言われたんです。
荒木 ジャパン病?
佐藤 エディさんはあまり寝ない人で、動き出すのも早い。だからスタッフも、目覚まし時計なして朝の5時台にパッと目が覚めるようになる。
実際、朝起きて携帯電話を見ると、エディさんからのメールが何通も届いている。2週間くらいで、ジャパン病になりました。
野中 それじゃあ、しっかり寝られないですね。
佐藤 熟睡できた日は、一日もなかったです。「ウワァッ」と叫びながら起きた日もありました。
野中 分析担当の中島正太さんも、何万パターンも分析した資料を提出しなければならなかったそうですね。
佐藤 エディさんに「まぁ仕方ないか」という妥協は一切ない。その点はサッカー日本代表監督のハリルホジッチさんや、オシムさんも同じだと聞きました。無理難題でも選手やスタッフに解決を求め、みんな日々、泣いていたとか。
妥協を許さないエディコーチは、プロ野球のある有名監督に似ているそうです。
その監督とは?
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