雑誌「週刊新潮」に、05年9月のW杯アジア予選で起きた誤審に関する記事がありました。
この試合では、日本の吉田寿光主審が笛を吹いていました。この試合では何が起きたのか、以下に記事を紹介します。
05年ワールドカップアジア予選での誤審
05年9月3日に開かれた男子サッカーW杯アジア予選のプレーオフ第1戦。ウズベキスタン(以下ウズベク)対バーレーンの試合は、吉田主審による誤審がもとで前代未聞の再試合となった。
発端は、PKの際のファウルだった。ウズベクの選手がPKを蹴る前に、味方選手数人がペナルティーエリアに進入するファウルを犯した。直後蹴られたボールはゴールに入ったが、ファウルのため得点は認められなかった。
この場合、PKのやり直しが正しい。ところが吉田はバーレーンに間接FKの指示を出してしまう。バーレーン選手に囲まれ間接FKだと言われたことや、詳細は省くがルール改正があったことなどが、判断に影響を与えたのかもしれない。
試合自体はウズベクが1対0で勝ちを収めるが、FIFA(国際サッカー連盟)は後日、吉田のジャッジを誤審とし、ウズベクの勝利を取り消して、再試合を行うと決定。FIFAはさらに吉田に対し、国際審判員の無期限資格停止処分を下したのだった。
この件に関して吉田には、多忙を理由に取材を断られたが、朝日新聞(06年1月17日付朝刊)のコラムで、彼は次のように振り返っている。
「海外から数多くの審判仲間が激励の電話をくれたのに、日本の仲間は近寄って来ない。誤審の影響でだめになったと色眼鏡で見られていたし、まるで犯罪者のように扱われている感じだった」
そんな中で助け舟を出したのが、当時のJリーグチェアマン鈴木昌と言われる。吉田の実績を認め、審判活動続行の方針を示したのだ。ために無事、Jリーグに復帰した吉田は、監督たちから「お帰りなさい」「信じているから、今まで通りやって」と言われたという。
彼はその後も”仕事上のミスは仕事で返す”という信念のもと、笛を吹き続けた。前記のコラムでも、「ミスは誰でもするもの。大切なのはそのあとのはずだ。私は下を向きたくなかった」と記している。
テレビや講演会などで、誤審の顛末を話し、審判としても笛を吹き続け、08年には優秀主審賞を獲得、そして今年は、歴代2人目となるJ1通算主審300試合を達成。吉田はミスをみごとにピッチで返した。
記事ここまで
ミスは誰にでも起きるもの。そのミスを仕事で返している吉田主審には、ぜひまたW杯の舞台で笛を吹いて頂きたいものです。
このコンテンツは雑誌 週刊新潮 2014年 10/16号152ページを参考にしました。