雑誌週刊現代2014年6/7号(Amazon)に、「天才アスリート驚異の空間認識能力」という特集がありました。

特にサッカー選手に参考になる内容なので、概要を紹介します。

サッカー選手の脳を調べる実験 大脳基底核に違いが

FCバルセロナに所属するシャビ選手は、試合中常に頭を上げ、首を振って状況を確認する姿が印象的です。

周りの状況を把握しようとしているんだ。味方だけじゃなくて敵のポジションも把握するためにね。
 
僕は最適な形で攻撃できるよう、常に2手、3手先まで考えている。
 

身長は170cmと、決して恵まれていない体格ながら、「スペインの心臓」とまで呼ばれるシャビ選手は、試合中のピッチをどのように認識しているのでしょうか。
 
NHKスペシャルの「ミラクルボディー」で、こんな実験が行われました。
 
シャビ選手、日本の大学サッカー選手、FCバルセロナの下部組織「カンテラ」で学んだ選手の三人を被験者に、ある条件下における脳の働きをfMRIで調べたのです。
 

 
その条件とは以下のとおりです。

■グラウンドを俯瞰した試合中の映像を見せ、ボールを持ったプレーヤーがパスを出す直前で一時停止する

■パスを出す先の候補1~3を画面上に表示し、それ以外は4とし、手に持ったスイッチで1~4のいずれかを選択する

 
この実験を繰り返したところ、シャビ選手の脳内の大脳基底核という箇所に他選手との違いが表れました。 
大脳基底核は、無意識に判断を下す、いわば直観力を司る組織で、情報を繰り返し取り込むことで機能が高まるとされています。
 
将棋の羽生善治名人も、次の一手を考える際に大脳基底核が活発に活動することがわかっています。
 

 
先のfMRIの検査では、大学生はパス選択の際、大脳基底核は働きませんでした。
 
「カンテラ」所属の選手は大脳基底核を使って直観的にパスコースを選択しています。
 
それでは、シャビ選手の場合はどうだったのでしょうか?

シャビ選手はフィールド全体を瞬時に把握「8~9割は頭でプレー」

そしてシャビ選手の大脳基底核の反応は、他のいずれの選手とも違っていました。
 
結果を分析したところ、シャビ選手はフィールド全体を瞬時に認識し、相手や味方の位置を把握して最適なパスを出していることがわかりました。
 
空間把握能力が他の選手とは一線を画しているのです。
 
シャビ選手は実験の後、次のようにコメントしています。

僕の場合は8~9割は、頭でサッカーをやっている。小さい頃からスピード不足で身体能力が高いわけでもないからね。
 

同じスペイン代表イニエスタ選手との脳の働きの違い

またスウェーデンでは、シャビ選手と、同じくスペイン代表でパスを受ける側であるイニエスタ選手を被験者とした調査も行われています。
 
その結果について、調査を行った研究所は次のようにコメントしています。

二人とも脳の情報処理スピードが速いという共通性はある。
 
シャビ選手は特にスキャニング能力(空間全体を見渡し、短時間での分析能力)において高い数値を示す一方、イニエスタ選手はよりクリエイティビティにおいて、より高い数値が出ている。

2~3手先を読むシャビ選手に対し、よりゴールに近いポジションのイニエスタ選手は決定的なシュートコースを脳が見つけているわけです。
 
イニエスタ選手はシャビ選手のプレーについて「シャビからは常に完璧なパスがくる。阿吽の呼吸がある」と語っています。
 

 
次のページでは、ネイマール選手の脳の分析結果を紹介します。