レーシングドライバーの松田秀士さんは28歳からレースを始め、還暦を過ぎても現役プロレーサーを続けています。
 
米国最大のレース、インディ500に出場したのは39歳のとき。

国内のスーパーGTシリーズに100戦以上出場したドライバーに送られる「グレーテッドドライバー」として表彰された経験もあります。


これだけ長く現役を続けられたのは、松田さんが「スローエイジング」を意識してきたからです。「アンチエイジング」ではありません。
 
加齢による体力の衰えは止められませんが、日々メンテナンスすれば衰えを遅らせることはできる、という考えです。
 
特に意識しているのは、視力のスローエイジングです。松田さんが最も勧めるのは、
 
老眼を自覚したらすぐメガネ屋さんに行き、自分に合った老眼鏡を作ること。
 
その理由は、老眼なのに無理して裸眼で生活していると、想像以上に脳が疲れるからです。
 
ピントを合わせようとして、脳が目に命令を出し続けるため、脳が疲労するのです。脳が疲れると、運転にも悪影響が出ます。
 
松田さんは50代に近づくにつれ、レース中のラップタイムが安定しなくなってきました。レース後半になるとブレーキングポイントの判断が曖昧になってきたからです。
 
そこで遠近両用メガネを作ったところ、ラップタイムはチェッカーフラッグまで安定し、ベストタイムを更新できるようになりました。
 
  
もうひとつ、松田さんが目のスローエイジングに心がけていることとして「目を積極的に動かす」があります。目を動かす独自の体操も実践しています。
 
やり方は以下のとおりです。
 
・眼球を左右上下斜め(合計8方向)に動かし、それぞれ3秒ずつ止める 
 
・その後、眼球をぐるぐると5回ほど回す

 
眼球を動かす筋肉は上下に4本左右に2本の合計6本。これらの筋肉を意識して、上の運動を何セットか繰り返します。
 
1日1回、高速道路のサービスエリアなど、運転中の休憩時間にこのストレッチをやると効果的です。
 
また、目のピント機能を鍛えるため、こんなトレーニングも実践しています。
 
・2m程度のタコ糸をドアノブなどに結び、鼻の頭に持ってきてピンと張る
 
・糸の上を両眼で見ると交差した × が見えてくる
 
・これを寄り目にして近くにしたり、開いて遠くにしたりを、1分~5分間繰り返す。

 
これらのトレーニングは、利き目だけで見る癖も矯正し、遠近感の感知力も鍛えられます。運転中の情報収集能力を高めることができるのです。
 
松田さんは
 
「いつまでも安全に楽しく運転できれば、新鮮な刺激を受けて脳内活性ホルモンをいっぱい分泌させることにもつながる。クルマを運転し続けること自体がスローエイジングにつながるのです」
 
としています。
 
このコンテンツは一個人 5月号98~99ページを参考にしました。